女の子の不安な夜

この夜はふたたび、夜行列車23:55発赤い矢号(001)に乗ってモスクワに戻る。コンパートメントに行くと中には、いかにもベタベタしそうな若いカップルと大人しそうな日本人の若い女の子がいた。カップルの女の方が「あなた英語しゃべれる?」と聞いて来たので、俺は「少しだけね」といつもの決まり文句を返していた。隣はなにやら賑やかだと思っていたら日本人の女の子で埋まっている。どうやらこの日本人の女の子は5人組で、コンパートメントは定員4人なので溢れた一人が俺と同じコンパートメントに割り振られたらしい。はたまたじゃんけんで負けたのかもしれないが、車掌が気を回して同じ日本人である俺を同じコンパートメントに割り振ったのかもしれない。


[サンクト・ペテルブルグにあるモスクワ駅]

一応二日前に一度乗っている俺はいろいろ知っていたので、座席の倒し方とか、電子ロックの開閉とか、車掌室に行けばお湯が貰えるとか教えてあげると、その子はただちに隣へ行ってそれを他の子達に報告するといったことが、繰り返された。ひと段落しさぁ寝ようかという頃、女の子も隣と行き来するのをやめてベッドに上がった。この女の子、人見知りのはげしい感じで話しかけてもなんだかそっけない答えが返ってくるばかり。旅慣れた感じも無く、これからこの4人で一晩と思うと不安と緊張でどうにも落ち着かないといった様子が見て取れた。まぁ、俺だって同じ日本人とは言え見ず知らずの男だしなぁ...。

でも、俺がカップルと他愛も無い話をしているのを横で聞いていて、多少引きつった感じだが笑顔を見せていたので、英語がまったくわからないわけではないのだろう。多分こんな状況を楽しみたいという気持ちはあるようだが、自分から話すというところまでは行っていないようだった。こればっかりはなかなか難しいもので、特に友達と一緒となるとどうしてもお友達とばかり話してしまうものだ。少ない会話の中で分かったことは、彼女達は学生ボランティアでロシアに来ているらしい。なるほどそれなら俺よりも自由にこの国を見てまわれるのかもしれないし、俺よりも英語を勉強していることだろう。

俺ともう少し話し込んでリラックスすることができれば、カップルとも自然と話せるようになったかもしれないが、俺はとにかくもう疲れていた。で、見捨てるようにとっとと就寝(すまん)。翌朝モスクワ到着30分前に目を覚ますと、隣と行き来する彼女がいた...。

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