団体様

先週こんなニュースがあった。
ネパールの「生き神」少女、許可なく訪米でクビに(ロイター)
ネパールのクマリと呼ばれて崇められる「生き神様」は、いくつもの条件をクリアした血の汚れのない(つまりは初潮前の)少女の中から選ばれ、初潮を迎えたり、怪我で大量の出血をしたりすると、次のクマリが選ばれ交代し、普通の生活に戻る。しかし、なにぶんこんな人格形成の大事な時期に「神様」として生活しているわけだから、「元クマリ」と結婚するともう大変で、旦那は早死にするなんて噂もある。詳しくはこの辺とかを読んでもらいたい。


[クマリん家]

そんな「生き神様」がカトマンドゥのダルバール広場の南側にある「クマリの館」に住んでいる。俺がこの「クマリの館」を訪れたのは、丁度8年前位か。当時持ち歩いていたガイドブックを引っ張り出して調べたところ、拝観料Rs10(当時のレートで数十円)を払うと、館の二階の窓からクマリが顔を出してくれる、なんてことが書いてあるが、隅の投稿欄には拝観料を払ったところで必ずしも顔をだしてくれるわけではないとも。当然のことながら、俺のようにみすぼらしい格好をした男が一人でふらっと訪れたところで顔を出してくれる程「神様」は暇ではない。なんてったって「神様」なんだから、だからと言って腹を立てるわけにもいかない。

クマリの館はなにも「クマリの姿」を拝むだけのものではなく、繊細で美しい見事な彫刻が施されており、建築物としても見応えがあるものだ。静かな中庭で、そんな彫刻を一人でしみじみと眺めているところへ、団体さんがぞろぞろとやってきて賑やかになる。騒がしくなるともいう。うるさいとも言う。と、そんなとき「生き神様」が窓から顔をだした。

おー、団体様。


[この窓からクマリは顔を出したが、撮影禁止]

件のガイドブックにはこうも書いてある。

「女神が2階の窓から、つまらなそうに顔を出してくれる」
いや、確かにそうだったけど「神様」に対して失礼な表現ではなかろうか。もう少しこうなんていうか。

「団体さんが見物に来た時に便乗して見ることもできるだろう」
いやいや、確かに見ることができましたけど、そんな裏技まで書かなくても。

かれこれ、8年前ってことは俺の見たクマリは引退して、もうお歳頃になってるのだろうか。

ちなみに、このクマリはネパールのあちこちの都市にいて、冒頭のニュースでクビになったのはカトマンドゥからバスで1時間程の古い町並みが残るバクタプルという街のクマリ。多くのクマリに関する記述は、クマリの中でも最も有名で影響力のあるカトマンドゥのクマリのことであり、その他のクマリに関しては生活振りや待遇など、少なからず異なる面もあるらしいので注意されたい。いずれにせよ「神様」として崇められ、愛されていることにかわりはないらしいが、ある日突然「お前今日から神様」って言われて崇められ、なんかよく分からないけど「お前神様失格」って言われたところで、本人は「だからどーした、へー」って感じかもしれない。(笑)



[ちなみにバクタプルはこんな街]

関連リンク:
From VALVANE「ネパールの生き神「クマリ」、無断訪米で神格剥奪」

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